2010年02月15日

すごい会議(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

私が大橋禅太郎氏の「すごい会議」に出会ったのは、2001年11月8日、インタースコープ設立1年半後であった。その時の丸一日のセッションも、非常に衝撃を受けたのではあるが、色々な問題があって正直あまり機能しなかった。(すごい会議の問題ではなく、インタースコープ側の問題で)。あれから9年以上が経過し、今回は株式会社インスパイラル代表取締役であり、すごい会議マネジメント黒帯コーチである芳地一也さんにコーチングをお願いした。芳地さんとは、インタースコープに出資していたグロービスに在籍されていた時にお会いして以来のおつきあいだ。その芳地さんが、このたび『クリティカルシンキング』という書籍を出版され、そのご連絡を頂戴したことをきっかけに、今回の「すごい会議」をお願いすることにした。

「すごい会議」と言われても、何がすごいのかはすぐには理解できないと思うが、色々とすごいところがある。本当のすごさは、『クリティカルシンキング』を読んでいただきたいと思うので、ここではあまり紹介しないが、いくつか「すごい!」と思ったことを紹介したいと思う。

その前に、事前に準備するものが色々ある。その一部を紹介したい。

(1)縦76.2cm 横63.4cm の3Mのばかでかいポストイット
(2)7.5cm x 7.5cm のポストイット人数分(出来れば「強粘着」版がベター)
(3)7.6cm x 12.7cm のポストイット人数分(出来れば「強粘着」版がベター)
(4)黒の新品のホワイトボードマーカー細め 参加人数+2本
(5)青と赤のホワイトボードマーカー細め2本ずつ
(6)全員にペットボトルの水
(7)ポットに入ったコーヒーや大きなペットボトルのお茶など十分な飲みもの+紙コップ等
(8)クッキー等の砂糖が入ったスナック(脳にエネルギーを供給します)

このばかでかいポストイットは、インタースコープでも使ったが、強粘着版は使わなかったような気がする。この組合せは、色々な場面で使えそうだ。ホワイトボードマーカーに関しては、よく他社に行くと、どのマーカーで書いてもほとんど出なくて、思い切り振ったり、無理矢理ボードに押しつけて書いたりした経験をお持ちのかたも少なくないのではなかろうか。そもそも書けないマーカーの蓋をまた元に戻して、そこに放置する人の気が知れない。だいたいそういう会社はダメな会社だということで芳地さんと意見が一致した。そんな会社が多いので、新品のマーカーを準備させるのである。

さて、座席のレイアウト。従前ではロの字が多かったのだが、広報ブログの写真でおわかりの様に、今回はなるべく人と人の間をくっつける配置で行なった。机上にはパソコンはなし。携帯もマナーモードではなく禁止。途中で、ちょっとトイレにとかで一人退出というのもなし。トイレに行きたい人は事前に申告し、全員そろって行かなくてはならない。

この様なルールで会議を進めるのだが、発言はほとんどの場合、全員が紙に書いてから発言する。このことの効果は非常に大きい。『定性調査手法として代表的なグループインタビュー(グルイン)は、熟練したモデレーター(司会者)の進行によって、対象者相互の刺激(グループ・ダイナミズム)により個人へのインタビュー調査では得られない発言・話し合いの展開が期待できる』と言われる。確かにそういう効果もあるだろうが、ある調査でスーパーで買える安い和菓子と、老舗の超高級和菓子を準備しておき、5人の被験者に食べてもらう。ただし、そのうち3人はサクラであり、どれが高級和菓子か知っている。その3人は、わざとスーパーのほうを高級で美味しいと言う。すると、何も知らされていない2人は、それに同調したそうだ。何グループで繰り返し実験をしても、ほとんどの人が、スーパーのほうを高級和菓子だと答えたという。

つまり、グループインタビューという手法は、モデレータのレベルがよほど高くない限り、オピニオンリーダーの意見に引っ張られる。この現象は、以前から知られているが、今回のすごい会議を実施してみて、このノウハウを応用することで、「すごいインタビュー調査」ができるのではないかと思った。私は既に調査会社を卒業(または中退)してしまったので、これ以上突き詰めようとは思わないが、すごい会議は、リサーチに応用できるという確信を持った。

このクリティカルシンキングは、論理的思考法(ロジカルシンクイング)の基礎を徹底的に解説しており、リサーチ会社やコンサルティング会社ではなくても、問題がありそれを解決したいと思っているすべての方々にお薦めしたい書籍だ。

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20:06

2010年02月08日

ツイッターとナラティブ(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

ツイッターはキャズムを超えたのではないかと思う。週刊ダイヤモンドに特集され、3月号の日経トレンディ「次世代ネットの衝撃 クラウド・Twitter・電子書籍」でも特集が組まれている。テレビでもWBSはもちろんのこと、NHK教育のめざせ!会社の星でも取り上げられた。

一方、「ナラティブ」という言葉は、あまり聞き慣れないと思う。「物語」「話術」「語り口」といった意味だが、現代精神医学で用いられている精神療法の一つで、「ナラティブセラピー」ともいわれる。自分の経験や出来事を誰かに説明する陳述であり、複数の出来事が時系列に並んでいるのが特徴だそうだ。

ツイッターは、ある意味まさにこの「ナラティブ」ではないかと思う。なぜなら、一つひとつのつぶやきは、連続的ストーリーにはなっていない。しかし、誰かが「寿司食いたい気分」とつぶやいたことに、「一緒に行こうか」とか「昨日は何食べたの?」といったつながりや、「ネタは何が好きなの?」とか、「旨い寿司屋知ってるよ」「実は昨日いい店みつけたんだ」といった、複数の出来事の関連性が付加されることで、短いつぶやきがストーリーとなっていく。

短いナラティブ(つぶやき)が、共感や問いかけによって、最初の語り手の予想を超えるストーリーが出来上がる。このことは、ある意味、メディチインパクトでいうところの交差点であり、ドラッカーのいうところの予期せぬ成功のひとつのパターンではないかと思う。

ある人に、「今晩、新宿で寿司食おうと思うのだけど、一緒に行かない?」とメールなり電話なりをしたとして、もしその人の都合が悪く断られたら、多少のがっかり感があるだろう。仕方なく別の人を誘ってまた断られたら、もう今日は帰ろうと思うかもしれない。しかし、「寿司食いたい気分」とつぶやけば、共感して一緒に行ってくれる人が現れるかもしれないし、例えそういう人がいなくても、旨い寿司屋や好きなネタの話で盛り上がれば、じゃあ明日なら行けるよという話しになり、気持ちよく帰れるのではなかろうか。

人間には、頭の中で物語を作りながら考える「ナラティブモード」と、論理的、科学的に考える「パラディグマティックモード」という思考形態があるそうだが、両者は相互補完の関係にあり、現代社会において、論理や法則や必然ではなく、ゆるやかな絆の中で、お互いの偶然性や交差的パッションを基にして、新しいストーリーを作って行くことが重要なのではないだろうか。特にイノベーションを起こすという意味では。

19:54

2010年01月05日

2010年の抱負(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2009年、ALBERTは、「おまかせ!ログレコメンダー」で確固たる基盤を作り、新たな方向性としての「アフィレコ」「カジュアルなCRM」を発表しました。2010年は、これらを『形』にする年です。

「アフィレコ」は、メディチインパクトの著者であるフランス・ヨハンソンの言う「交差的イノベーション」と位置づけることだできるでしょう。また、「カジュアルなCRM」は、イノベーションのジレンマの著者であるクリステンセンの言うところの「破壊的イノベーション」であると思います。

どちらも、その発生はちょっとしたひらめきやアイデアから生まれています。「これをこうしたらよいのでは」という様なアイデアは、いくらでも浮かびます。しかし、それがクリエイティブであるかどうかは、「新しいかどうか」「価値があるかどうか」で決まります。そして、そのアイデアがイノベイティブになるには、「実現するかどうか」が重要なのです。心理学者であり創造性に関する研究の第一人者であるミハイ・チクセントミハイは、「ある思考が正しいかどうかは、何らかの基準に照らさなければわからないし、それが価値があるものかどうかは、社会的評価を得るまで明らかにならない」と述べています。つまり、「アフィレコ」がイノベイティブかどうかは、実際に人びとの目に触れ、使われ、評価されなければならないわけです。そういう意味において、レコメンデーションという道と、広告という道の交差点から生まれた交差的イノベーションである「アフィレコ」の真価が、2010年に明らかになると言っても過言ではないでしょう。

一方、「カジュアルなCRM」は、過去のCRMに関する多くの失敗が、イノベーションのジレンマに陥っているのではないかという疑念に基づいています。イノベーションのジレンマという著作は、クリステンセンが1997年に発表したものですが、あまりのインパクトの大きさに、優良企業では推薦図書にはできない(社員が辞めてしまうので)と言われるほどでした。 「顧客の意見に熱心に耳を傾け、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供している業界トップの優良企業。ところが、その優れた経営のために失敗を招き、トップの地位を失ってしまう」。つまり、すべてを正しく行なうがゆえに優良企業は失敗するというものです。

例えば、いわゆるフィルム方式のカメラ。アドバンストフォトシステム(Advanced Photo System 、APS)をご存じの方も多いと思います。たまたま1998年くらいに、某カメラ会社のリサーチにからんでいたので、非常に親しみがありますが、従来のフィルムカメラの短所をことごとく改良した画期的なフィルムカメラでした。しかし、その後、レンズ付きフィルム(使い捨てカメラ)やデジカメ、そして携帯電話に取って替わる歴史を見るにつけ、イノベーションのジレンマを思い知ります。

つまり、小型で超高性能のカメラを開発した優良企業の優良商品が、極めてスペックの劣るレンズ付きカメラ、やデジカメ(カシオのQV-10の画素数は25万しかなかった)に完全に凌駕されてしまったわけです。

同様のことがCRM業界でも起きているのではないでしょうか。例えばデータマイニングや統計のソフト。非常に高価で高性能、毎年の様にバージョンアップをし、どんどん進化しています。しかしながら、「買ったけれど難しくて使えない」「買った後にコストがかかる」「使っても思うような結果が出ない」という声をよく聞きます。これは、クリステンセンの言うところの、「ハイエンドで求められる性能を、製品の性能が越えてしまっている」ということにほかなりません。データマイニングを提供するソフト会社や高度なCRMソリューション、ERPやSCMソリューションを提供する優良企業も同様かもしれません。

製品の成長の傾きと、ユーザーの成長の傾きを比較すると、製品の成長の傾きのほうが大きいのが通常です。なぜなら、製品の開発は、その道のスペシャリストが寄ってたかって高度なものにして行くわけですが、普及が進めば進むほど、その新しい高度な技術に着いて行ける消費者は減って行くのです。今、皆さんが使っている携帯電話やパソコン、DVDレコーダー、様々なソフト、どれだけの機能があるかも分からないくらい高度で、しかもほんのわずかしか使っていないのではないでしょうか。

CRMも同じです。なぜ、今までのCRMソリューションが、超高額で導入に時間がかかり、しかも思うような結果が出ないということになっていたのでしょうか。まさにこれは持続的イノベーションの正しい姿であり、今こそ破壊的イノベーションとしての「カジュアルなCRM」が求められていると考えています。

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クリステンセンのイノベーションのジレンマ


22:55

2009年12月11日

社員合宿@伊東(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

今までは箱根、湯本方面で行なってきた合宿だが、今年は気分一新、伊東にした。合宿の場所を選ぶのも結構大変で、会社が新宿なので新宿起点で考えるのだが、バスは酔う人もいるし動けないので腰痛にもよくないのでもうやめた。電車の場合、千葉とか那須とかの案もあったが、コストと時間を考えるとどうしても伊豆方面が有利になってしまう。そんなこんなで、結局今回は伊東になった。

東京駅組と品川組に分かれて、踊り子105号で一路伊東へ。茅ヶ崎に住んでいる保月監査役と、訳あって小田急線で小田原で合流した浜田さんとも無事会えた。伊東駅で大量のお酒とつまみを買い、ホテルに。いよいよ合宿開始。合宿の模様は広報ブログにアップされる予定です。


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11:44

2009年11月30日

行動ターゲティング広告が機能しない3つの理由(上村崇)

posted by Takashi Uemura

行動ターゲティングとは、閲覧者のウェブ上の行動ログを解析して興味や嗜好性を判断することで、閲覧者に適した広告を配信する広告手法だ。

米国では以前から行動ターゲティング広告がリスティング広告に次ぐ注目の広告手法であるとされ、今後急速な市場拡大が予想されている。emarketerが2008年に発表した予測によると、米国での市場規模は2012年には40億ドルを超えるとされている。

米国のターゲティング広告市場


同様に日本でも行動ターゲティング広告が2006年ごろから注目されるようになり、Yahoo! JAPANを皮切りに、サイバーエージェントグループのマイクロアドなどの専門企業が立ち上がった。2009年3月になって帝王米Googleが同サービスに参入することを発表し、いよいよ役者は揃ったという状態になった。

国内の行動ターゲティング広告市場


ご存知の通り、行動ターゲティングの概念自体は、インターネットが世の中に登場した時点から存在していたし、長い間期待され続けてきた。
それが近年ブロードバンドの普及やハードが安価になったことで、いよいよ実際のサービスとして提供できる環境が整備され、数年前から改めて注目が集まっているということだと思う。

しかし、こういった環境が整い、役者も揃ったにも関わらず、いっこうに成功事例が取り沙汰されないのは何故か。

それは"既存の"行動ターゲティング広告の仕組みに「根本的で致命的な欠点」があるからだと思う。

■理由その1:
配信可能な広告が極めて限定的

行動ターゲティング広告の例を説明する際に非常によく取り上げられるものとして「車」や「旅行」の広告がある。

「例えば"車のサイト"を見た人には、"車メーカーの広告"を出す」というものだ。
非常に判りやすい。
中古車サイトや今年のモーターショーのサイトを見た人が、車を購入する意向があると判断して広告を出せば、クリックされやすいというわけだ。
同様に旅行会社は、旅行コミュニティサイトやポータルサイトの旅行情報を閲覧した人に広告を。ということだ。

しかし、実際のところこのような判りやすい例に当てはまるのはごく僅かであって、他の商材を当てはめて考えてみると、困り果ててしまう。
例えば今こうしてオフィスを見渡してネットで売られているものを列挙してもそれは明らかだ
「加湿器」
「コンポ」
「プリンター」
更に今僕が聞いている音楽、宇多田ヒカル。彼女が新曲を出した場合など。
これらの商材を行動ターゲティング広告で配信したい場合、いったいどんなサイトを閲覧した人をターゲティングすればよいのだろうか。

■理由その2:
精度と配信量が反比例する

ここでいう「精度」というのは、「実際にターゲティングされた閲覧者が広告主の商品に興味を持つ人であるか」ということだ。
この「精度」を上げるためには、閲覧者の興味を強くあらわすサイトを特定しておき、そのサイトを見た人に広告を出すのがよいということになる。例えば旅行の例であれば「旅行コミュニティサイト」などの極めて旅行ニーズに関連性の強いサイトを見た人。極端な例だが、宇多田ヒカルの例で言えば「宇多田ヒカルの公式サイトを最近見た人」といったことになってしまう。

もう一つ精度を上げる方法として、複数のサイトを横断して閲覧した人を特定するというアプローチもあると思う。「AとBとCとDというサイトを横断的に見た人」というように、掛け算することで興味の特定精度を上げるという方法だ。当然のことながら、掛け算の数を増やせば増やすほど、精度が高まるということになる。

既にお気づきと思うが、こういった方法によって精度を上げようとすると、配信可能な閲覧者が極めて限定されてしまうため、広告の配信ボリュームが極端に少なくなってしまう。
「広」告というぐらいなので、一定量以上のボリュームの消費者にリーチできなければ意味がないわけだが、「配信量」を求めるのであればターゲティングの度合いを緩めなければならない、「精度」を求めると配信量が限定される、というジレンマに陥ってしまうのだ。

■理由その3:
十分なログが溜まらない

3つ目は最も致命的と言ってよいかもしれないが、行動ターゲティングの要である「閲覧者の行動ログ」は、実は中々溜まらないという問題だ。
「広告」として機能させるためには閲覧者がその商材に興味をもっているタイミングで配信しなければならない。商材の購買サイクルにも依存するが、比較的最近のログに基づいてターゲティングしなければ意味がないということになってしまう。
先に述べたようなターゲティングの「精度や配信量」を確保するために、半年も1年もログが溜まるのを待っていたら、その消費者はとっくにどこかで競合の商品を買ってしまっているだろう。

2008年7月にGoogleが発表したデータによれば、世界には実に1兆以上のURLが存在し、毎日数十億ずつ増えているということだ。(URLベース)
国内だけでもウェブサイトの数は億単位であり、毎日毎日無数の新サイトが立ち上がっては消えていく。人々が明日どのサイトを見てるかは、予測不可能なのだ。

一般的な行動ターゲティング広告では、アドネットワークに所属している各メディアに専用のスクリプトを仕込むことで、cookieなどを利用して閲覧者の行動を特定している。従って、このアドネットワークに必要なメディアをどんどん取り込んでいかなければいけない。
しかしそれは、急速に拡大し続ける宇宙の星一つ一つに旗を立てていく行為に等しい。

こうった理由から「行動ターゲティング広告」という素晴らしい概念を実際に機能させるのは、現在のようなアプローチでは難しいと思うのだ。

「アフィレコ」は、これまでの行動ターゲティング広告とは全く違ったアプローチで閲覧者の嗜好や興味を特定することでこういった欠点を解消し、「機能する行動ターゲティング広告」の実現を目指している。

と、ここまで書いて疲れたので今日はここまで・・・・orz

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