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2008年11月09日

創業者の引き際(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

はじめに、私は別に引退を考えている訳ではないし、今辞めようという気持ちは毛頭ないのでご安心を。

なぜ、こんなタイトルでブログを書き始めたかと言うと、明治大学MBAの講義で前回までシュンペーターを扱っていた。シュンペーターは、「企業家とは何か」の中で、『企業家は、一度創造された企業を単に循環的に経営していくようになると、企業家としての性格を喪失する』と言及している。また、企業家の行動の適切な解釈として、『企業家は変化と冒険とまさに困難そのもののために、経済に変化を与え、経済の中に猪突猛進する』とある。まさに、これは自分に当てはまると思った。

今週からは、いよいよピーター・ドラッカーに入る。ドラッカーと言えば、難解でよくわからないという印象がある。インタースコープ時代に久恒さんがハーバードビジネスレビューを読んだりやドラッカーの話をよくしたりしていて、よくあんな難しい本を理解できるなと感心していた。難解というのには2種類あって、1つは「表現が難解」、もう1つは「内容が難解」である。表現が難解というのは、例えば英語やロシア語で書かれた書物は童話でも難解というのに似ており、易しく翻訳すれば中身は理解できるというものだ。内容が難解というのは、シュレディンガーの波動方程式とか偏微分を使った熱力学など、化学系の大学を卒業した私でも未だに理解できないもので、今更理解しようとも思わないものである。

そういう意味で、こと経営書に関しては、まさに自分が経営者となり経営を実践しているのであるから、内容が理解できないということはないはずだと信じている。となれば、ドラッカーは表現が難しいという事になるわけだ。特にドラッカーの経営論は、大企業や国際的な企業だけに適用されるものではなく、中小企業にも当てはまると言われているのでなおさらだ。

例えば、ドラッカーの有名な言葉で「企業の唯一の目的は顧客の創造だ。」というのがある。これを初めて聞いた時には、まるで何を言っているのかわからなかった。しかし、これも表現を易しくすれば誰でも理解できる。「顧客の創造=売上げを上げることだ」、と言われればそりゃそうなのかと思う。さらに、そのためには、売上げをもたらす顧客を増やすことだ。当然のことながら、企業は購買の決定権のある顧客の売上げで成り立っているわけである。

商品とは、「顧客の問題解決の手段」であり、ニーズとは「お金を払ってでも解決したいと顧客が思っている問題や課題」、利益とは「顧客への貢献度の物差」。このように、常に顧客を主語で経営を考えると、非常にわかりやすくなる。企業の目的は、決して利益を上げることではないと言う。利益は企業にとって、空気や水と同じ存在であり、人が生きる目的が、空気を吸い水を飲む事ではないように、企業の目的は利益を上げる事ではなく、その利益によって顧客を創造し、社会に貢献する事だという考えは非常に重要だし、理解しなくてはならない。

そんな経営の神様と言われるドラッカーの、代表的な著作である「イノベーションと企業家精神」の15章「ベンチャービジネス」の中に、「創業者は何を貢献できるか」という項があり、「トップ経営陣を構築した後に自分自身の将来を考えなくてはならない」とある。さらに、ベンチャービジネスが発展し、成長するにつれて、本来企業家である創業者の役割は容赦なく変わり、これを受け入れない限り事業の発育が止まってしまう、と述べている。

この事と、先に述べたシュンペーターの「企業家とは何か」を併せて考えると、ALBERTが順調に顧客を創造し続け、上村君の目指す安定した基盤ができればできるほど、創業者山川としての経営上の役割は減少し、自分としての新たなイノベーション、職業開発に注力できる体制ができるという事になり、即ち経営の第一線からも引くという事に他ならない。それが何年後になるかは分からないが、その時にはドラッガーが書いているように自分自身にこう問いかけるのだ。

「今後の経営のため、客観的に見て、何が必要なのか?」

「自分は何が得意か。これらのニーズのうち何を供給できるのか。しかも立派に供給できるのか?」

この2つの質問に結論を出してはじめて次のように問うことができる。

「本当は何をしたいのか。何をすることに価値を置いているのか。残りの人生とは言わないまでも、これからの数年間を何に費やしたいのか。それは会社が本当に必要としているものか。それは重要かつ基本的、不可欠の貢献なのか?」

2008年11月09日 23:57