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2009年06月14日
分析力を武器とする企業(山川義介)
posted by Yoshisuke Yamakawa
最近、色々なところでこの本が推薦されてており、私も色々な人におススメしている。実は、この本はデータフォーシーズの古本社長に教えていただいた。タイトルや表紙の帯を見た瞬間に、「これってALBERTのことを書いた本ではないか」と思うくらいすべてがマッチしていると思い、即座にアマゾンで購入した。
ALBERTは、もともと平石さんと私が2000年に創業したインタースコープの次なるビジネスモデルとしてニッセンとの合弁で設立した会社なので、ベースにマーケティングリサーチや統計解析、データベースマーケティングがあったわけであり、分析力を強みにしたレコメンデーションの専門企業である。今でこそ競合する部分もあるが、レコメンデーションの専門企業のひとつであるシルバーエッグさんにも、2000年当時は何度かお邪魔し、トーマス・A・フォーリーさんや西村淳子さんからディープナレッジを教わったものだ。当時のインタースコープは、リサーチベースでe-日本人価値観クラスターを作り、新しいパーソナライゼーションのモデルを構築しようと東京大学との産学連携で購買予測モデルNSXという研究を進めていた。残念ながらこのプロジェクトは、個人情報保護への機運の高まりなどもあり、当時のインタースコープでは購買履歴データを入手することが難しかったためにとん挫した。その後、ニッセンとの出会いがあり今に至っているので、統計解析や分析力に強いレコメンデーションの専門企業ができたことは、ある意味必然的な社会の要求であったのかもしれない。
本の話に戻すと、予想に違わず、第一章の1ページ目から「レコメンデーション」が登場する。『ネットで借りて~自宅に届き~ポストに返却♪』をご存じのかたも多いだろう。DMM.comのテレビコマーシャルだ。私もDMMではないが愛用している。このビジネスモデルを思いついたのが、30代、ソフト会社経営、映画マニアのリード・ヘイスティングスだ。少し本の内容を引用してみよう。
「アポロ13号」を借りて返し忘れ、40ドルもの延滞金を払わされたことで、「定額料金・貸出期間無制限・延滞料なし」にすればいいじゃないかと考えた。1997年のことである。そこで彼は自分の会社の売却益を元手に「ネットフリックス」を設立した。この事業の成功の最大の理由は、データ分析力にあった。顧客の行動パターンを分析し、シネマッチ(Cinematch)という推薦エンジンが、顧客にとびきりの「おすすめ」を提案する。このシネマッチには自慢のアルゴリズムが組み込まれている。星の数ほどある映画を分類してクラスターに分け、顧客が好むクラスターはどのクラスターかを見極める。顧客のレビューを数値化し、ネット上でのアクセスログから行動パターンを読みとる。こういったことを実施した結果、サイトを訪れた人に、たちどころに専用ページが用意される。
映画という商材は、レコメンデーションを語るには最適なものかもしれない。ALBERTはKDDI研究所と協調フィルタリングエンジンを用いたパーソナライズド・レコメンドエンジンの提供開始を発表しているが、KDDI研究所も映画のレコメンドエンジンに関する研究には定評があり、ベイジアンネットによる映画コンテンツのお薦めに関する論文も多数ある。こういった高度な分析力を必要とするレコメンドエンジンがある一方、人ベースの共起分析による単純な推薦アルゴリズム(この商品を見た人はこの商品も見ています)というものは、商品や顧客に対する知識が全くなくてもできてしまう。つまり「商品Aと共起するのは商品Bである」という結論は、その因果に関係なく自動的に計算されるからだ。商品が何であろうが、顧客が誰であろうが、数学さえ分かれば誰でもできてしまう。
おむつとビールの共起は有名だが、そもそもどんな顧客がどんな時に、なぜおむつとビールを一緒に買うのかは、誰も明らかにしておらず、ただこの意外な組み合わせゆえに、データマイニングの成果として取り上げられているにすぎない。最近ではこの様な単純なアルゴリズムを用いた廉価版レコメンドシステムが散見されるようになり、困ったものだと思っている。ネットでビールを買ったら、いきなりおむつを推薦されたらどんな気持ちになるだろうか。レコメンドシステム導入の最終目的は、クライアントの売上げ、利益向上であることは間違いないが、レコメンドシステムに用いられる顧客の行動ログや商品データなどを分析することで、真のCRM、顧客戦略や商品戦略策定の有用なツールになることを理解しなくてはならない。
ネットフリックスでは、配送にも分析力を活用している。頻繁に借りる会員と滅多に借りない会員を分類し、スロットリング(throtling)という方式で配送を調整している。RFM分析(Recency:最新購買日、Frequency:累計購買回数、 Monetary:累計購買金額)で言えば「F」に当たるわけだが、通常のCRM理論では「F」が大きいほうがよい顧客だと言えるが、ネットフリックスのモデルでは、Fが小さいほど優先順位が高いという。定額性なので利益率が高いということなのだが、当然のことながら解約されれば元も子もない。そこで、Fが小さい顧客の満足度を維持するために、配送の優先順位をうまく案配しているそうだ。
こういうパーソナライゼーションは、まさに究極のCRMであり、ネットフリックスは分析力を武器とする企業を代表すると言ってもいいだろう。他にも、DVDの頒布権(はんぷけん)をいくらで買うかの決定にも役立っているというし、意思決定に分析のできる人間を雇い、大きな成功に結びつけている。ログデータの集計、定量分析、定性分析、行動パターン分析、顧客満足度分析、マーケティングミックス最適化分析など、あらゆる部門で分析を行なうことが企業文化になっているという。
ALBERTの目指す方向は、この「分析力」を提供することでクライアントを成功に導くということであり、それが必然的に我々に与えらた社会的使命だとも思っている。
2009年06月14日 21:31

