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2009年10月12日

迂回生産方式マネージメント(山川義介)

posted by Yoshisuke Yamakawa

「迂回生産」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれないが、経済学ではよく使われる。機械、設備などの生産手段をまず生産し、それを使用して消費財を生産する方法のことで、簡単に言えば手で魚を捕るのではなく、まずは釣り竿を作ってから魚を捕ろうという考えだ。一見、遠回りに見えるが最終的には効率がよく近道であるということなのだが、これは日々の仕事のやり方でも同じことが言える。

身近な例で言えばエクセルのマクロもそうだ。1つの作業であれば、マクロを使うより手でやったほうが早いだろうが、数が増えれば圧倒的にマクロを使ったほうが早い。難しいのは、手で魚を捕り続けた成果と比較し、釣り竿を作る投資によって得られる魚の将来価値が、どのくらいのスピードでそれを上回るかという判断だ。あまりにも釣り竿を作るのに時間もコストもかかってしまったら、その間に捕れなかった魚の損失を補填できなくなってしまう。時には人海戦術で手で魚を捕ることも必要だ。特にスピード重視のベンチャーにおいては・・・・。

一方、学生アルバイトでもできるルーチンワークを経営者がやっていれば生産性が上がるはずがない。経営者やリーダーがすべきことは、自分でなくてもできる仕事はどんどん他者に任せ、自分は自分にしかできない仕事、クリエイティブで高度な仕事をするということだ。ALBERTでは、社員がアルバイトに教え、さらにはアルバイトがアルバイトを教える文化を作ろうと言っている。これは究極のリーダーシップの連鎖だ。

収益を上げるビジネスモデルには5種類ある。

(1)何もしなくても収益が上がるモデル
(2)一部の優秀な社員とオペレータと設備やコンピューター等で収益が上がるモデル
(3)一般社員が中心になり、外注などを活用して収益が上がるモデル
(4)一部の優秀な社員やリーダー、スキルの高い層が中心になって仕事をして収益が上がるモデル
(5)マネージメント層が中心になって仕事をしないと収益が上がらないモデル

さらに6番目としてベンチャー企業などでは、

(6)創業者が中心になって仕事をしないと収益が上がらないモデル

というのもありそうだ。ステイタスとしては、それでも収益が上がっていない場合もあるが、モデルとしての考え方なのでそこは議論しない。

もちろん、どれか一つということではなく、(1)~(6)までの比率の問題だ。(6),(5)→(1)へと比率が上がっていくモデルが最もよいわけであって、創業者が頑張らないと収益を上げられないモデルは最低だということが言える。

(1)の「何もしなくても」というのは極端だとしても、ほとんど何もしなくて収益が上がるモデルは極めてレアだと思うが、特許収入とか著作権収入などの利権ビジネスがそれに近い。

(2)のモデルとしては、アパート経営や駐車場経営などもそうかもしれないが、我々が目指しているASP(Saas)型ビジネスはこれだ。

大企業に多いパターンは(3)ではないかと思う。大企業の多くは、最も仕事をしているのが一般社員であり、経営者はそれほど長時間労働をする訳でもなく、外注や派遣社員などを活用して収益を上げている。中堅企業や中小企業は、(4)または(5)のパターンだろう。零細企業はほとんどが(5)ではなかろうか。

そして、ALBERTを含む多くのベンチャー企業がまだまだ(6)の段階ではないかと思う。しかし、我々が目指しているのは(2)のパターンであり、(6),(5)から一気に(2)に昇華させようとしている。徐々に(2)に向かったのではとても間に合わないのだ。さらに言えば、実は(3)から(2)に移行することはあり得ない。なぜなら(2)には多くの社員は必要ないからだ。一部の優秀な社員で収益を上げるビジネスモデルは、(3)は飛び越すのである。

そこで重要になるのが「迂回生産方式のマネージメント」だ。自分がやれば早いしミスも少ない。だから自分でやる。また自分の仕事を人に任せてしまうと自分の存在意義が薄れる。なので人に任せない。企業において迂回生産ができない大きな2つの理由がここにある。優秀なリーダーは、多少のリスクや心配があってもそれを人に任せる。また任せた以上は自分が責任を持つ。これを実現しない限り、いつまでたっても(2)のモデルにはならない。一度でも任せた人がミスをすると、「ほらみろだから任せられんだ」、「だから自分がやるんだ」、という考え方では、迂回生産方式はできず、ずっと手で魚を捕り続けることになる。

最近、データ解析はその方向性だけ示して、どんどん菅由紀子に仕事を任せている。その菅はその仕事を咀嚼して商品企画部のスタッフに任せている。今では、解析のテクニカルな部分だけを取れば、圧倒的に菅のスキルが上がって来ており、さらに言えば、私よりインターンや学生アルバイトのほうが、はるかに解析ソフトを使いこなしている。時々、咀嚼の仕方を間違えたり、早とちりで手戻りが発生したりもしているが、概ねよい方向に向かっていると思う。

次の段階として、解析の方向性や分析方法の開発、結果の解釈や次へのアクションまでできるようになれば、どんどん(2)のフェイズに近づいていく。分析の方法をパターン化し、サーバーができるまでに昇華できれば、真に「分析力を武器とする企業」になれるはずだ。

2009年10月12日 02:50