昨今、「最適化」とか「オプティマイゼーション」という言葉がよく使われるようになりました。最も馴染みがあるのは検索エンジン最適化「SEO」ではないでしょうか。ほかにも、LPO(Landing Page Optimization)、EFO(Entry Form Optimization)、広告の最適化などのソリューションが提案されています。では、最適化とはどのようなことをいうのでしょうか。ここでは、「最適化とは」、「最適化問題」などについて具体的な事例に基づき説明します。
最適化とは、「制約条件がある中で複数の選択肢を組み合わせ何らかの成果を出すとき、その成果を最小または最大にすること」をいいます。一方、「最適」とは「最もよくあてはまっている」という意味です。「この服が最も似合っている」などというのも最適の一種ですが、誰にでも似合う服というものはないので、「その人にとって」という制約条件がある中での最高というわけです。たとえば、速ければ速いほどよい100m走には最適という概念はなく、「100m走を最適化する」とはいいません。「最適」というのは、無条件に最速や最小がいい場合には使わないのです。
料理に使う塩の量は、少なくても多くてもおいしくなく、ほどほどの量でなくてはなりません。これを少し数学的に解釈すれば、おいしさは、どこかにピークがある曲線になるということです。また、ピークは必ずしも1つではありません。「帯に短かし襷に長し」ということわざがありますが、帯に最適な長さと襷に最適な長さの2つのピークを持つ曲線を表しています。中途半端な長さには意味はなく、必ずしも平均値に意味がないという統計的な示唆に富んだことわざなのです。
では、最適化は具体的にはどのような課題を解決するのでしょうか。ALBERT(代々木2丁目)から大手町駅まで移動する場合を考えてみましょう。まずどこからスタートするかという選択肢として代々木駅から「総武線」「大江戸線」「山手線」、南新宿駅から「小田急線」、新宿駅から「中央線」「丸ノ内線」「都営新宿線」などがあり、さらにそれぞれに乗り換え駅という選択肢があり、大手町駅には「丸の内線」「半蔵門線」「都営三田線」「東西線」が乗り入れています。さらに、タクシーやバスなども選択肢として考えられます。
こういった選択肢やその組み合わせがたくさんある中で、例えば、乗り換え回数を2回以内で到達時間を最小にすることを最適化といいます。乗り換え案内はまさに、私たちの移動ルートを最適化してくれるコンテンツです。
『BI(Business Intelligence)』とは、業務システムや購買履歴などから蓄積される膨大な企業内のデータを、組織的かつ系統的に蓄積・分類・検索・分析・加工し、企業の意思決定に有用な知識や洞察を生み出すという概念や仕組みのことをいいます。野村監督が1990年ヤクルトの監督時代に提唱したことで有名でな『ID野球』ということばがありますが、IDとは、Important Dataを意味する造語で、経験や勘にとらわれずデータを元に科学的にチームを動かすことをいいます。IDのビジネス版が『BI』だと考えればよいでしょう。
データ分析のアウトプットとしては、単に集めたデータを報告する段階から、イレギュラーなデータから問題発見したり、アラートを出したり、予測、モデリング、最適化へと高度化します。インテリジェンスが高く、最も競争優位なのが「最適化」であり、今後の企業経営に不可欠な概念です。※
※参考文献:『分析力を武器とする企業』トーマス・H・ダベンポート、ジェーン・G・ハリス著 村井章子訳,
日経BP社,ISBN:978-4-8222-4684-6
レコメンドエンジンとは、対象者にとって最適なコンテンツ(商品や情報)を、対象者の何らかのアクションに対して判断し、予測するステップを経てリアルタイムに提示するもので、最適化ソリューションの一つと考えられます。ここでは、それ以外の最適化ソリューションに触れたいと思います。
いかに訪問者数を増やすかで用いられる最適化ソリューションがSEOで、ある特定のワードでGoogleやヤフーなどの検索エンジンで検索したときに、自社のサイトが結果の上位に出て来るようにする技術です。ある調査によると、何かを知りたいときに使用するツールとして、約80%の人が検索エンジンをあげているそうです。検索結果の上位に出るようになれば、訪問者数が増大することはいうまでもありません。つまり、そのサイトが顧客に見つけられなければ、いくらよいサイトを作っても何の意味もなく、見つけてもらうのには、そのサイトの関連ワードで検索したときに、上位に出てくるようにする必要があるのです。昨今、このSEOに注目が集まっているのにはこういった理由があるのです。リスティング広告などのように、有料で自社サイトを目立たせることもできますが、それが広告だと分かってしまうと、検索される確率が減ってしまうので、検索結果に出てきたほうがより効果的だとされています。
では、どのようにすれば検索結果を上位に上げることができるのでしょうか。注目されているのが、Googleが開発した「ページランク」という考えです。重要なページほど上位に出てくるべきであるという考えに基づき、重要度をページランクというアルゴリズムで評価しています。ページランクというのは、どれだけ多くのサイトからリンクされているかということを1つの指標にしています。多くの人が参考にするページはよいページだという基本的な考え方です。さらに参考にしているサイトが公共機関や大企業などの、多くのサイトからリンクされている信頼できるサイトであるほどランクが上がったり、そのサイトがたくさんのリンクを貼っているサイトだとランクが下がったりするなど、色々な工夫がされています。これを逆手にとって検索結果を上位に出そうというのがSEOです。
SEO対策には内部対策と外部対策があります。内部対策というのは、サイトのソースコードが最適化されているかで、検索するロボットが理解するようなソースコードで記述しなくてはなりません。文章の構造が論理的であること、<title><meta> などの様々なタグなどが適切に使われていること、内部リンクや画像の扱い方なども様々な最適化方法が提案されています。それに対し、外部対策は多くのサイトからリンクされるようにすることをいいます。支持者が多いページはよいページだというわけです。このようなSEOを行なうことで、検索エンジンからの訪問者数を増加させることが可能になります。
検索エンジンで上位に表示されて訪問してもらったからには、興味・関心を持ってもらい、サイト内を閲覧してもらう必要があります。いくら訪問者数を上げても、すぐにまた検索エンジンの結果ページに戻られてしまったら、元も子もありません。そこで最近は、LPOに注目が集まっています。ユーザーが着地するページ、すなわちサイト訪問者が最初に訪れるページを最適化するということです。 たとえば、あるユーザーがアクセサリー関連のワードで検索をして、あるECサイトを訪れたとき、そのトップページの内容がほとんど紳士服やバッグであったらどうでしょう。そのユーザーは、すぐに検索結果のページに戻り、他のサイトに行ってしまうかもしれません。ところが、最初にそのECサイトのアクセサリー関連のページが表示されれば、見てみようという気になります。ユーザーの過去の閲覧履歴や検索ワードなどによって、それぞれに合わせた最適なページを表示することをLPOといいます。
LPOの発展的手法で、ランディングページだけではなく、ウェブサイト全体をパーソナライズし最適化する手法。
サイトで商品を閲覧し、気に入った商品を見つけていよいよ購入しようと、入力フォームに送付先の住所などを入力することがありますが、この入力フォームが分かりづらかったり、入力項目が多すぎたりで、途中であきらめて別のサイトに移動してしまうユーザーが結構います。これを防止するための最適化ソリューションがEFOです。 入力規制をして間違った入力をしないようにしたり、色を変えてエラー部分をお知らせしたりと、様々な工夫がなされています。これによって、スムーズに入力を進ませることで、登録や購入時のユーザー離脱を防ぐことができます。会員登録さえしてもらえれば、メールでのプロモーションなども可能になりますし、サイトでのレコメンデーションもさらに効果的に行なえます。
コンバージョン率最適化という意味ですが、非常に幅が広く今まで述べた複数の最適化を統合的に組み合わせる必要があります。SEOなどで集客が上がっても、コンバージョンが低ければ意味がありません。離脱率を低減するためのEFOもその一つの施策ですし、コンバージョン率を上げるために、ランディングページの最適化、サイトのデザインや文言の改善、表示速度の問題、コンテンツそのものの問題など、多岐にわたる最適化が必要になります。
広告業界では「オーディエンスターゲティング」という従来とは全く異なる概念が注目を浴びています。今までの広告は、「枠買い」でした。つまり、どの番組、どの時間帯、どの新聞、どの雑誌、どの電車など、広告を出す場所や期間を指定することで、より効率のよい広告配信を行なってきました。もし20代の女性向けの商品の広告を出そうと思ったら、20代の女性が見そうな番組や雑誌などに広告を出すのがよいとされてきまました。ところが、属性年代でのセグメントでは不十分という時代になり、この商品を買ってくれそうな人に配信するという、人を特定した配信方法が米国を中心に広がり始めています。ターゲティング広告のさらに一歩先をいくものだといわれており、広告は「枠買い」から「オーディエンス買い」に移行しているというわけです。ここで登場するのが、広告の最適化です。広告そのものを最適化する広告クリエイティブの最適化や、配信先の最適化などが挙げられます。
最適化問題(Optimization Problem)とは、「与えられた制約条件の下で、ある目的関数を大または最小にする解を求めること」をいいます。最適化問題は、数理計画問題ともいわれるように、制約条件や目的関数などを、数理モデル(数式)にしなくては解けません。先に述べた乗り換え案内なども経路の最適化であり、最適化のアルゴリズムに従ってコンピュータが最適解を出すわけです
数理計画分野では有名な「ナップサック問題(Knapsack problem)」を例に挙げて説明をしてみましょう。ナップサック問題とは、「何個かの価値や容量、重量などがわかっている品物があります。ナップサックには容量や強度の制限があり、それを超えないように品物を詰めなくてはなりません。ナップサックに入れた品物の価値の和が最大になるようにするにはどの品物を選べばよいでしょうか」という問題です。
具体的には、泥棒に入った家に以下のようなものがあったとします。なるべくトータルの価値が大きくなるように盗みたいのですが、ナップサックには3,000しか入れられません。あなたなら、何をナップサックに入れますか?まずは、価値が一番高い金塊に目がいくと思います。しかし、金塊は重量が重いので、これを先に入れてしまうと、後に入れるものが制限されてしまいます。このように、価値が一番高いものから順に採用する方法を「どん欲法」といい、必ずしも最適化はされません。欲張りは結局は損をするということでしょうか。
これを最適化問題として解いてみましょう。制約条件は重量の合計が3,000以下、変化させるのは採択の有無で、採用なら1、採用しなければ0です。この価値の合計を最大化する組み合せを計算してみてください。組み合せは2の8乗=256通りあります。これほど単純なモデルでもこれだけの計算をしてみなくてはいけないので、とても大変です。
実際に最適化ツールを使って計算してみたものが以下の表です。ナップサックに3,000しか入らないときには、「置物」と「絵画を」盗むのがよいようです。しかし、3,200入るナップサックだったとすれば、置物も絵画も採用せず、「金塊」「指輪」「ネックレス」「現金」を盗むのが、価値の最大化になるわけです。
このように、組み合せが多すぎて自分では計算できないときに、最適な組み合せを導出するのが最適化問題です。
ダイエットをしている人も多いと思いますが、極端な食事制限はせず1日3食きちんと食べ、栄養バランスを取った上でカロリーコントロールをしなくてはいけないと言われます。もし以下のような食品があったとします。一般的な成人の1日の摂取エネルギーを1,800kcalとすると、栄養バランスを考慮したうえでこのエネルギーを摂るとしたら、以下の食品のどれを選べばよいでしょうか。
これはまさに最適化問題です。栄養バランスという制約条件があるなかで、カロリーを1,800kcal以内で最大化するという問題です。栄養バランスの最適化に活用できるのが「四群点数法」 ※です。食品を栄養的な特徴で以下のような4つの食品群に分類し、80kcalを1点とする単位で表します。一日に必ず摂らなくてはいけない点数は、1~3群は3点、4群は11点といわれています。合計20点になりますので、成人の場合は最低でも1,600kcalは必要になるというわけです。各食品群からまんべんなく食品を選び、摂取する事で、栄養バランスの良い食事を摂ることができます。
上記に挙げた食品のエネルギー量(kcal)と各群の点数を示したものが以下の表です。これらの中から、栄養バランスを摂りながら目標とするエネルギー量に最も近い食品の組合せを決めることを考えます。
上記に挙げた食品のエネルギー量(kcal)と各群の点数を示したものが以下の表です。これらの中から、栄養バランスを摂りながら目標とするエネルギー量に最も近いメニューの組合せを決めることを考えます。性別、年代別にエネルギー量の目標が異なるので、それぞれの最適化問題を解いてみました。その結果が以下の通りです。
すべて目標となるエネルギー量と各群の目標点数をクリアしていることがわかると思います。これらをまとめると以下のようになり、目標とするエネルギー量が少し異なるだけでも、食べる食品が大きく変わることが見てとれます。この程度の単純な最適化問題でも、自分で解こうと思うと非常に大変だと思いますが、最適化のソフトを用いることで瞬時に結果を出すことができます。
