CROSS TALK

カゴメの改革期を支える
データ活用とは。

「トマトの会社から、野菜の会社に。」をスローガンに、2025年には「食を通じて社会問題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」になると定め、いままさに改革を加速しているカゴメ株式会社(以下、カゴメ)。今回は、カゴメ マーケティング本部 広告部 宣伝グループの細川和紀様と、株式会社博報堂(以下、博報堂) デジタルビジネス推進局 デジタルプロデュース部の松居達也様に、ALBERTが支援しているカゴメのデータ活用プロジェクトについて、ALBERT営業担当の山下、コンサルタントの堀、データエンジニアの沼尻が、カゴメの顧客育成やマーケティング戦略、データ活用を通して得られたことについてお話を伺いました。

データドリブンで全社レベルのCRMへ

細川 私はカゴメのデータマネジメントの担当をしています。領域としては、市場調査から広告の効果測定、市場環境や消費者分析です。社内でのデータドリブンマーケティングの推進や定着を担っています。

松居 私は博報堂全社を横断する形で、各クライアントのデジタル・データビジネス領域全般の業務プロデュースをしております。カゴメから本プロジェクトのマネジメント業務のお話をいただいたのは、2015年のことでしたが、生活消費財メーカーにおけるデータ統合やデータマーケティングは2018年の現在でも難しいとされており、各社が模索している中で、2015年から着手を始めていたことを考えると、カゴメはとても先進的だったように思います。

細川 カゴメはもともとトマトの栽培から始まった会社です。トマトを始め、野菜を用いた商品を提供することによって、「食」を通じてお客様の健康寿命の延伸に貢献したいという想いがありました。これまでカゴメはトマトを用いた商品が中心でしたが、今後事業領域をどのように拡大していくのか、お客様にどう寄り添っていくべきなのか、全社レベルでの顧客起点のマーケティングをどう推進すべきかなどの課題を感じていました。
そのなかでも、健康寿命の延伸に貢献する為に、商品を一時的に大量購入していただくというよりは、習慣的に購入していただくにはどうしたらよいのか、どのような商品ラインナップの提供が必要なのかなどについて考えるフェーズに差し掛かっていました。しかしながら、これまではブランド単位での新規顧客やリピーターの分析しか実施できませんでした。そこで、まずは社内にあるデータを統合管理し、活用していこうという話になりました。

カゴメ株式会社 細川様

パッケージ化されたシステムの活用より柔軟な対応を重視

細川 ご提案いただいた際は、テクノロジーの発展は速いですし、長い取り組みになっていくので、パッケージ化されたシステムの活用よりは、都度柔軟に対応していただけるかどうかという点を重視していました。3社ほどからお話を伺って、分析力があるということや、ご相談した際に快く対応していただけるのではないかということを感じて、最終的にALBERTを選びました。

山下 提案時から現在までのカゴメのプロジェクトを振り返ってみると、パッケージだけで進めていたら難しかっただろうと改めて思います。最初の要件定義の段階でも、こういうこともやりたい、ああいうこともやりたいというご要望が、当初の構想に比べて増えていきましたよね。

 手始めに、飲料事業と食品事業を横断した、全社的な顧客構造の可視化を実現することになりました。

沼尻 カゴメでは、ALBERTのプライベートDMP構築ソリューション「smarticA!DMP」を採用いただいています。データアナリティクスの分野においては、活用場面に適した選定をしたいという観点から、パッケージ製品だけではなく、ご要望に応じて都度ツールを選定しています。例えば顧客構造の可視化においては、BIツールとしてTableauを導入しました。また、顧客構造の閾値決定や購買商品のアソシエーション分析にはRを活用しました。さらに、購買パス分析ではGoogle Chartを用いて可視化しました。こうした最適なソリューションの選定は、データエンジニアとして難しい部分でもありますし、やりがいを感じる部分でもあります。

株式会社ALBERT 沼尻

組織に属さず、戦略に属する

細川 カゴメのマーケティング戦略は、商品の提供を通じて、お客様の人生に長く寄り添っていくということに重きを置いています。カゴメの顧客構造は全体の3%のお客様で売上全体の30%近くを担っていまして、少数のヘビーユーザー様に支えられています。お客様全体の平均年間購入額は約1,400円なのですが、ヘビーユーザー様には約2万円ご購入いただいています。中には、10万円以上ご購入いただくお客様もいらっしゃいます。

 トータルでひとりのお客様がどのぐらい購入しているかを把握しているメーカーはあまり多くない印象です。カゴメではデータを活用してさまざまな数値を把握してらっしゃいます。 細川さんは、データに興味がある方には積極的に活用の機会を作り、一方でデータに意識的なバリアがある方には丁寧なヒアリングによって要望を引き出すなど、データ活用の社内啓蒙に努めていらっしゃいます。

細川 他社のお話を伺うと、事業ごとにデータを持っていて、同じ社内でも利用しづらいこともあると聞きます。一方、マーケティング本部には「おきて」が9条ありまして、そのなかのひとつが「組織に属さず、戦略に属する」です。経営層にもデータ活用は重要という認識があり、部門を超えたデータ活用を推進すべきという方向性があります。 こうした全社的な取り組みのなかで、社内に向けて、一緒にデータを活用することで何が変わるのか、どういったメリットが生み出せるのかということをわかりやすく伝えることで、今では部門を超えたデータ活用が進んできています。

株式会社博報堂 松居様

 カゴメの皆様は、常にお客様に向き合っていて、顧客行動についての仮説を持っているので、どのようにすれば、このデータが納得感のある見せ方となるか、博報堂の皆さんともよく討議します。

松居 一般的に、業務担当者様に分析結果をご説明する際は、ご自身で持っている勘や経験と食い違う結果だと、納得感が得られず活用してもらえないですし、逆に、既知の事実だけだと、それはわかっているから必要ないという話にもなりがちです。そういったことも踏まえて、どういうデータの見せ方をすれば「腹落ち」してもらえるのかについては、毎回、苦心しながら検討していますよね。

 カゴメのプロジェクトでは、パネルデータからのさまざまなチャネルの購買履歴やターゲット属性・意識項目、オウンドメディアの閲覧履歴、サードパーティとの連携データ、Webアンケート結果など、さまざまなデータをDMPにて統合管理しています。そのため、博報堂やALBERTのみならず、複数のパートナー企業が関わっています。キックオフミーティングは20人近くで行ないました。

松居 博報堂を始め、カゴメと長くお付き合いさせていただいているパートナー企業は、カゴメはこういうマーケティングをしたいのだろうなとか、こういうことが課題なのだろうなという点について、おおよその察しがつくような関係性でした。そうしたなかで、新しくデータ活用の専門企業として入っていくことは難しいことだったのではないかと思うのですが、ALBERTは本当によいピースになっていただけたと思っています。

細川 これだけ多くのパートナーとプロジェクトを進めることは、カゴメとしてもかなり稀なのですが、よい体制が構築できたと感じています。カゴメだけでは判断に困る点について助言をいただきながら、各社の強みを結集して進めることができており、大変心強く感じています。他の社内プロジェクトの手本になるような推進体制だと思っています。

 DMPの役割を考えると、どうしても多くの企業と協力する必要があり、調整業務などにしばしば困難が伴います。それでも会社や立場の枠を超えて、カゴメの場合はこうじゃないか、このアプローチはおかしいのではないかなどと、営業もコンサルタントもエンジニアもマーケターも全員で話し合える文化がありますよね。そうしたことを受け止めてくださるプロジェクトメンバーの懐の深さを感じています。

ブランドを横断して「継続性」を分析し、顧客構造を定義

細川 部門を超えたデータ活用を推進すべきという意識が社内で共有できており、これまでマーケティング担当者の経験や勘で判断していたようなことを、DMPも活用しながら、データにもとづいた判断によってPDCAを回していくという風土が少しずつ出来上がってきています。最近の例を挙げると、BIを活用して季節限定商品のキャンペーン効果をアドホックに検証しました。

 カゴメはPDCAの「A」アクションのスピードが速いと感じています。例えば、顧客構造の定義をした翌年には、その見直しを行ないました。

細川 はい。全社レベルの顧客構造については、どうしたらお客様が優良化していくのかという点がよりシンプルに見えるように変更しましたね。それにより、一般的なRFM分析で評価されるような、短期間で頻繁に購入されるお客様ではなく、長期にわたってカゴメとお付き合いいただいているお客様を「優良顧客」としてとらえられるようになりました。

松居 ALBERTとの取り組みで良かった点は、統計解析によって、実態に即して顧客像を可視化したことです。今回は「決定木」を用いていますが、これまでのカゴメのマーケティングでは取ってこなかったアプローチによって、顧客分類の根拠をすべて数値化することができました。新しい発見もありましたし、ロジックの説明力も高かったので、納得感が得やすかったのではないでしょうか。

細川 そうですね。実際の購買行動の評価が数値化されたことにより、どういった購買行動がどのように顧客育成に影響していくのかについて、イメージがつかみやすくなったという点は、大きな進歩だったと感じています。

 ありがとうございます。マーケティング施策にデータをどう落としていけばよいのかという点においては、マーケターの方に使っていただきやすい形で、顧客構造の可視化や顧客分析を実施できたと思っています。例えば、スムージーの発売開始の影響を受けて、新しいタイプの優良顧客の出現を確認できるようになったことが印象的でした。

山下 売上だけで判断してしまうと、カゴメの場合は飲料の売上構成比が高いため、そればかりに目がいきがちです。しかし、顧客育成に寄与する商品としては、飲料だけではなく食品の役割も当然考えなくてはいけません。各事業の関連性をデータで示すと、納得感が得られます。

松居 データによってみんなが暗黙的に思っていたことが可視化されるというのはよいところだなと思います。例えば、カゴメ トマトケチャップに関して定期的な購買における継続性が見られたことや、常飲する傾向が強い野菜生活100の習慣性が購買パスによって可視化されたことについては、やっぱりそうだよねという納得感がありました。データをもとに、これまでの顧客アプローチの正しさを裏付けることもでき、戦略の説得力が増しました。

細川 はい。これまでは新しいお客様が購入しているか、リピート購入されているかについて、ブランド単位での把握しかできていなかったのですが、ブランドを横断して「継続性」を分析し、その結果を顧客構造の定義に反映させたおかげで、これまで経験的に持っていた顧客像が間違っていなかったと思えるようになりました。

山下 さらにブランドを横断して見ていくことで、例えば機能性表示化によって、顧客育成がどのような影響を受けるかが、迅速かつ容易に把握できたこともとても興味深かったですね。これは、ブランド単位だけで見ていると気づけなかったことだと思います。

細川 そうですね。こうしてさまざまなことをデータで表せるようになったのは、とても大きいことだと感じています。

カゴメの商品との接点を網羅的に把握していきたい

細川 最近、カゴメ社内からもお客様の継続性を証明してほしいという依頼が多くあります。また、その先のLTV(ライフタイムバリュー)まで教えてほしいという依頼もだんだん増えてきました。

松居 今後、日本では人口減少が進み、国内の潜在的な市場規模が縮小傾向にあります。また、長寿化も進んでいます。こうした時代にあって、これからはLTVのような、1人1人のお客様と「寄り添う」ための指標が重要になります。顧客構造の可視化によって、短期間ではなく習慣性や継続性のある購買行動を評価できるようになった点は、中長期的なマーケティング戦略を考えていく意味でも、とても意義のあることだったと思います。

 データを横断して継続性を見ていくことは重要なポイントで、今後はさらに長期間のデータを貯めていく必要があると考えています。

沼尻 はい。10年、20年…と長く貯めて活用していきたいです。

細川 実際にカゴメのファンサイトの会員に聞くと、10年以上購入し続けている方が大半です。今後は、そうした歴史をデータで見られるようにしていきたいです。また、分析して終わりではなく、プランニングにどう反映させ、マーケティング施策に落とし込んでいくのかについては、このプロジェクトでも重視しているポイントです。より一層アクションに繋げていけるような活用方法についても考えていきたいです。

カゴメ株式会社 細川様 株式会社博報堂 松居様

 分析結果をマーケティング施策にどう活用していくか、何が施策においてリアルに効果が出ているのかを意識し続けていきたいと思います。

細川 また、これまでは、家庭用商品を購入しているお客様を中心にデータ活用を推進してきましたが、次のステップとしては、家庭用商品だけではなく通販や外食でもカゴメの商品に触れていただく機会はあると思いますので、そうしたお客様との接点も網羅的に把握していきたいです。そして、マーケティングに関わるデータだけではなく、生産や物流の分野においても社内にデータがありますので、そうした分野でもデータ活用のノウハウを水平展開できると思っています。さらにデータ量が増えていくと、必然的に人手でできる集計や分析は限られてくると思いますので、新しいテクノロジーであるAI(人工知能)や、ALBERTが持つ独自の分析手法なども合わせて検討していきたいと思っています。何かおすすめのデータ活用方法はありますか。

沼尻 マーケティング活動と生産計画は密接な関係にあります。両者をより効率化していくために、AIを用いた商品の需要予測や生産計画の最適化などが可能です。工場内においても、画像データを用いた不良品検知などの事例があります。 ALBERTでは、定量的なデータはもちろん、定性的なデータも含めて活用できますので、今後もぜひさまざまな内容に取り組ませていただければ嬉しいです。

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