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CROSS TALK

自治体×AI最前線  熊本の子育てはAIに「聞きなっせ」

熊本地震からの創造的復興を成し遂げるために、県民総幸福量の最大化に向けた取り組みを推進している熊本県。県民の結婚・出産・子育ての希望の実現を目指して、新たな子育て相談支援システム「聞きなっせAI くまもとの子育て」の実証試験を開始しています。「聞きなっせAI くまもとの子育て」は、子育て支援制度や手続き、イベント情報、子育てで困ったときの対応などについて、24時間365日いつでも瞬時にAIが回答するシステムです。今回は、熊本県 健康福祉部 子ども未来課の村上様(右)と澤田様(中央)に、ALBERTのAI・高性能チャットボット「スグレス」データ活用支援コンサルタント 浜田(左)が、「LINE」と「スグレス」を活用した子育て相談支援システムについてお話を伺いました。

子育ての悩みをいつでもどこでも相談できる

村上私は熊本県庁で、結婚支援や子育て支援、少子化対策などの業務に携わっています。

澤田私はその中でも、「よかボス」の事業を担当しています。「よかボス」とは、自ら仕事と生活の充実に取り組むとともに、共に働く社員の仕事と生活の充実を応援するボスのことです。「よかボス宣言」(「社員の仕事と生活の充実を応援します」と企業の代表者等が宣言すること)を行なった県内の企業を「よかボス企業」と呼んでいて、現在(2018年末時点)は県内の183の企業と14の市町村が登録しています。またその中で、「よかボス企業」の子育て安心AI事業「聞きなっせAI くまもとの子育て」にも取り組んでいます。

浜田これまで熊本県では、子育てについてどのような目標を掲げ、またどのような課題を抱えられていたんでしょうか。

澤田2016年に熊本地震が起きてから、熊本県では「熊本復旧・復興4カ年戦略」を策定し、県民アンケートで「子育てを楽しいと感じると回答した県民の割合(2015年時点) 87.5%」を、2019年までに増加させるという目標を立てています。課題のひとつは、現状、第一子出産前後の女性の継続就業率が4割程度だということです。継続就業率を高めたり第二子以降の出産の意欲につなげたりするには、男性の家事育児への参加や、行政だけではなく民間企業も含めた全体で仕事と子育ての両立支援を進めていく必要があると考えています。

浜田そうした課題を解決するために、子育て相談支援システム「聞きなっせAI くまもとの子育て」が発足したんですね。

村上これまで行政に子育てに関する問い合わせをしたい場合には主に市町村が窓口となっており、住民が窓口に直接問い合わせるという方法が主流でした。

澤田核家族化が進み子育て中の家庭が孤立する中で、慣れない家事育児でストレスがたまったり子育てに悩んだりする方が増えています。また、特に男性は人に相談しにくいという傾向もあります。こうした子育ての現状を地域みんなで解決するために、妊娠から出産、子育てに関することについて、誰でも、いつでもどこでも相談できるようなツールを作りたいと考えました。

観光スポットとしても有名な熊本県庁のイチョウ並木で撮影
観光スポットとしても有名な熊本県庁のイチョウ並木で撮影
熊本県 健康福祉部 子ども未来課 村上様
熊本県 健康福祉部 子ども未来課 村上様

村上熊本県庁では、AIを活用した事業はこれが初めての取り組みです。取り組みを始めた頃は、「AIということは、ロボットが喋るんですか」と聞かれるなど、どのような取り組みなのか浸透していませんでした。ただし、今回の子育て相談支援システム「聞きなっせAI くまもとの子育て」を実際に使ってもらってからは、「とても便利」「ずっと使いたい」とのお声をいただいています。

澤田先日、実証試験中に使ってもらった方150人にアンケートを行ないましたが、「すぐに回答が返ってくる」「夜間でも土日でもいつでも使える」といったお声が多いです。「相手がAIなので気軽に聞くことができる」というお声もいただきました。

浜田8月に実証試験を開始してから数ヶ月経ちますが、数値を見ると、土日や夜間など閉庁時間の利用率が全体の40%を超えていましたね。やはり閉庁時間にも相談したいというニーズは大きいのだと思います。また、利用後に都度「問題は解決しましたか?」という質問をしていますが、それに対し「はい」が約80%と、まだ実証試験中にも関わらず良い評価をいただいています。

利用者の生の声が詰まっている

澤田実証試験開始前は行政の手続きにまつわる質問が多くあるのではと想定していましたが、実際にどのような質問がされたか確認すると、「夜泣きが止まらない」「熱が出た」など一般的な子育ての悩みに関する質問や、「ベビーカーを貸し出してくれる」「ミルクのお湯を提供してくれる」等の子育てに優しいお店の情報に関する質問が多いと感じています。こうしたQ&Aは今後さらに追加していきたいと考えています。

浜田このように普段なかなか聞くことができない住民の声を収集できるということも、今回の取り組みの強みだと思います。

村上はい。これまではあらかじめ対象を絞ってきちんと準備した上での調査は実施したことがありましたが、こうした大がかりな調査とは異なり、今回の取り組みではいつでもどこでも声を集められます。

澤田改まって調査をすると、そういえば前に困ったことがあったんだけど何だったっけとなる場合もありますが、「聞きなっせAI くまもとの子育て」では日常のなかで困ったときに聞きたいことを入力してもらえるので、利用者の生の声が詰まっているように感じますね。

浜田リアルでカジュアルな意見を集められますよね。また、生の声を聞くことで、県として今後必要となるサービスの検討に利用できることも利点だと感じています。

熊本県 健康福祉部 子ども未来課 澤田様
熊本県 健康福祉部 子ども未来課 澤田様
「聞きなっせAI くまもとの子育て」チャットボット画面
例:「八代市の予防接種」と入力した場合
関連する複数の質問が表示され、選択すると各回答を確認できます。

Excelファイルのみで構築できる

ALBERT データ活用支援コンサルタント 浜田
ALBERT データ活用支援コンサルタント 浜田

浜田今回、なぜ「LINE」やALBERTのチャットボット「スグレス」を活用しようと考えられたのでしょうか。

澤田渋谷区の子育て支援自動応答サービスの事例を知り、渋谷区様に電話をしたところ、ツールは「LINE」、中身のAIは「スグレス」を活用していることを知りましたが、AIを導入するにはプログラム構築などとても大変だろうと思っていました。SNSを活用したチャットボット型のAIの構築にあたり、企画コンペを実施したところ、ALBERTから詳細で熱心なプレゼンを拝聴し、「スグレス」はExcelファイルでQ&Aを用意するだけで構築できるということで非常に簡単だと思いました。また、AIが勝手に考えて回答してしまうことがあるのではないかと心配でしたが、「スグレス」はあらかじめ決められた答えのみ返すので、正しい情報を伝えなければならない行政として安心だと思いました。

村上はい。また、個別にアプリケーションを開発する場合と比べ、すでに多くの住民が日常的に活用している「LINE」を活用すれば、広報コストがかからず周知がしやすいとも考えました。

澤田子育て世代の方はほとんど「LINE」を活用しているので、熊本県のアカウントと友だち登録してもらえばすぐ使っていただけることが良いですね。また、個別にアプリケーションを開発すると、都度進化するスマートフォンに合わせてセキュリティへの対応が必要となりますが、「LINE」であればそれが必要ないということもメリットと考えました。

45市町村への協力依頼

澤田今回の取り組みは県が主導で進めていますが、県内の45市町村どこにいても使えるツールを目指しています。例えば、明日出掛ける先にオムツを替えられる場所はあるのかなど、住んでいる地域以外の市町村の情報も取得できるものが必要だと考えました。よって、ツール構築の際は45市町村のそれぞれ持っている情報をまとめる必要がありました。合同説明会を開催するなどして、各市町村にご協力をお願いすることが大変でしたね。

浜田私もAIに関する説明員として説明会に参加しましたが、当日は来られなかった市町村のご担当者様もいらっしゃいましたよね。そうした方にはどのように説明されたのですか。

村上その後は個別に説明を行ないました。各市町村で準備してもらうQ&Aが多かったのですが、協力してもらうため、しっかり説明をして理解してもらいました。

澤田正直なところ、Q&Aの準備には「手間だ」「忙しくなる」という声もありました。しかし、これまで予防接種やイベント等に参加できなかったり参加していなかったりという住民についてもLINEを活用することで住民のニーズ把握につながり、ダイレクトに繋がることができると伝えたところ、前向きに協力してもらうことができました。また今後については、住民の生の声・ニーズである質問内容を各市町村にフィードバックすることで、住民ニーズの把握につながり、今後必要となるサービスの検討に利用することが出来るのではと考えています。

浜田私はQ&A登録のサポートも行なっていますが、今回は県の主導で、45市町村に約80個ずつ回答を用意していただきました。また、一般的な子育ての悩みに関するQ&Aはもちろん、熊本県結婚・子育て支援サイト「hapiモン」掲載の「くまもと子育て応援の店」の情報と連携することで子育てに優しいお店の情報も加え、合計で3,805件のQ&Aを登録しています。熊本と東京だと物理的な距離がありますが、電話やクラウドで密にコミュニケーションを取ることで、システム構築をサポートさせていただいています。

澤田おかげで距離感を感じず、いつもそばにいてサポートしていただいているような感覚です。

熊本県が一望できる熊本県庁の会議室にて
熊本県が一望できる熊本県庁の会議室にて

浜田「浜ちゃん」と愛称で呼んでくださることもあり、ありがたいです。また今回の取り組みをきっかけに、全国各地の自治体からさまざまなお声をいただいています。AI技術導入を検討するにあたり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やOCR(光学文字認識)といった案もあるなかで、チャットボットの導入は比較的ハードルが低く検討しやすいというご意見をいただくことが多いです。活用方法としては、子育て支援はもちろん、ごみや防災、庁内問い合わせなど多岐にわたります。近い将来、全国の自治体で、チャットボット活用が当たり前となるかもしれませんね。

村上今回の子育て相談支援システムをきちんと作り上げて良いものにすることで、それが広まっていき、別の分野でも使ってみようという流れになればと考えています。

澤田まずは、熊本県で子育てをしている住民に「聞きなっせAI くまもとの子育て」があって良かったと思ってもらえるよう、正式稼働に向けて頑張りたいですね。

浜田ありがとうございます。これからも一緒にAIを育てていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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