CROSS TALK

「製薬×データサイエンス」で社会を変える

中外製薬は、成長戦略「TOP I 2030」のもと「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げ、デジタル技術によって自らのビジネスを変革し、社会を変えるヘルスケアソリューションの提供を通じヘルスケア産業のトップイノベーターを目指しています。2019年10⽉にはDXを部⾨横断で推進するデジタル戦略推進部を発⾜させました。

今回は、中外製薬様との取り組み紹介の第一弾として、中外製薬デジタル戦略推進部長 中西様とALBERT執行役員でデータサイエンス教育部長の平原が、中外製薬のデジタル人財育成について対談を行いました。(第二弾「「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」デジタル人財を育成しヘルスケアの未来を変える」はこちら

※この座談会は、2022年3月に新型コロナウイルスの感染対策を講じたうえで実施しました。

DX専門部署の立ち上げから人財育成の取り組み開始まで

中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部長 中西 義人様
中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部長 中西 義人様

中西私は2005年に中外製薬に入社し研究所に配属されました。約10年、抗がん剤の研究を行い、その後アメリカの企業に派遣され、帰国後に本社に異動し、医薬品開発のプロジェクトに携わっていました。2019年の10月に全社のDXを主導するデジタル戦略推進部が立ち上がり、そこからデジタルの世界に入りました。

それまでも中外製薬では、デジタル活用に取り組んでいましたが、部門ごとに施策を進めていたため一貫性のある取り組みが難しいという課題がありました。そのような中、全社でベクトルを合わせようという気運が高まり、全社デジタル戦略の推進をリードする我々の部署ができ、当社のDX推進におけるビジョン「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を作成し、推進しています。

「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」で掲げている3つの基本戦略のうち、基礎となるのが「デジタル基盤の強化」です。ソフト・ハード両面で強化に取り組んでおり、デジタル人財の採用や育成が柱のひとつです。

平原2021年4月よりスタートしたデジタル人財育成プログラム「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」(以下、CDA)のデータサイエンティスト育成コースでは、本格的に製薬要素を含んだプログラムを半年間かけて共に作り上げ、ALBERTのデータサイエンティストが講師を務めております。

中西CDAは2021年4月から第1期が始まり、現在第4期・5期の開始が決まっています。部門横断でデジタル人財の育成が進んでおり、さらなるデジタルの活用に向けて日々取り組んでいます。

平原私の経験上、分析結果として出てくるのは既に現場の方にとっては知っていることであるケースが多くございます。事実確認として、知っていることをちゃんと立証できた、もしくは間違っていることが立証できた、という事実が重要です。既知であっても、その結果に価値がないというわけではなくて、客観的なファクトベースで話ができるようになる。そのことの重要性を理解していただくのには、時間がかかりますね。

中西そうですね。弊社では、社長をはじめとする経営陣が「デジタル活用を推進するぞ」という明確な意思表示を社内外に発信しており、トップのコミットメントも非常に重要だと感じます。それが大前提としてあり、その上で各部門に展開しているため、進みやすくなっている部分も大きいですね。

株式会社ALBERT 執行役員 データサイエンス教育部長 平原 昭次
株式会社ALBERT 執行役員 データサイエンス教育部長 平原 昭次

ALBERT社との協働によるデータサイエンティストの育成

中西現在、CDAには「デジタルプロジェクトリーダー育成」と「データサイエンティスト育成」の2つのコースがあります。 デジタルプロジェクトリーダー育成コースでは、デジタルを活用した様々なプロジェクトの立ち上げ、推進していくリーダーを育成しています。
もう一つがデータサイエンティスト育成コースです。当社では、データサイエンティストを「高度解析・統計型」「プログラマ・エンジニア型」「ビジネス型」の3つの型に分類していますが、ALBERTさんには、高度解析・統計型のデータサイエンティストの育成を支援いただいています。

データから自分で課題を見つけ、解析結果を出すことができる人財が重要と考えているため、CDAでは座学に加え、実際の業務でのOJTによる育成プログラムを提供しています。データサイエンティスト育成コースの受講者の一部については、OJTの部分でもALBERTさんに支援いただいています。
さらに、研修を受講したメンバーが、データを活用しながら業務を行っている様子を周りの人に示すことで、「自分達にもできるかも」とか「これぐらいならちょっと頑張れば独学でもできそう」と感じてもらえるような波及効果も狙いつつ、DXを推進する人財を着実に育てていく予定です。

平原人財が育って、共感を得ながら周りにも影響を与えていくのは理想的ですね。ALBERTからは、OJTアドバイザーとして講義の時とは別に最前線で活躍している現役データサイエンティストが面談を実施して、そこで実務活用についての重点ポイントの解説等をさせていただいています。

中西我々の部門や御社のデータサイエンティスト、更に参加者の周囲の方の協力もあった上で実施し、研修後も、CDAで獲得したスキルを現場で実践できるように業務のアサインを働きかけたり、モニタリングを行っています。

平原講義を受けて修了書をとっただけで終わらず、必ず実務に繋がるようにしていらっしゃるのですね。 多くの企業の人財育成に携わっている中で感じていることですが、育成対象人数を増やすと受講後のサポートが難しくなり学んだことを活用しないまま元に戻ってしまう、というケースもあります。そうならないために、私たちも、ただ一方的に講義をして終わりではなく、継続的に人財育成を支援する中でのコミュニケーションの取り方について、日々考えながら取り組んでいます。

中西引き続き、ALBERTさんにはデータサイエンスの専門領域での講義に加え、先程お話したOJTのところで、社内だけで対応できないような課題設計や我々だけでは技術的に少し難しいところをサポートしていただけると、デジタルの活用がさらに進むのではないかと思います。

マネジャー層の育成も推進

中西御社との協働以外でも、人財育成に関して様々なコンテンツを提供・検討しています。特定の職種にフォーカスした研修もそうですが、eラーニングも含めて、今後は全社的なリテラシー向上やデジタルスキルの底上げをするような取り組みについても、人財育成という観点で検討しています。

さらに、マネジャー層への教育研修も社内で関心が高まっています。部下がデジタル活用のアイデアを出ても、上司がその良し悪しを判断するのが難しいという話を聞きますので、それを解決するためのコンテンツを提供し、上がってきた提案に対して「それいいね!」と自信を持って後押しできるような、基礎知識やマインドセットが学べる機会を提供していく予定です。

平原私たちもマネジャー向けに「AI・分析プロジェクトの進め方」の講座をつくっており、テーマ設定・方針設計・運用設計等が学べるようになっています。ワークショップ形式で自らがDX推進の課長になったと想定し、課題に取り組んでもらうという内容なのですが、プロジェクト開始前に注意すべきポイントや失敗するリスク、実現時のインパクトと難易度について、どういった評価軸を持っておくといいかを知ってもらうだけでも、マネジャー層が現場の人たちと共感をもって、実務活用へむけての会話がしやすくなると思います。

中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部長 中西 義人様 株式会社ALBERT 執行役員 データサイエンス教育部長 平原 昭次

DXビジョン達成に向けた社会還元型の取り組みを推進する

中西我々の「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」には、達成するためのロードマップがあります。まず2021年までが「ヒト・文化を変える」ステージ、2022~2024年が「ビジネスを変える」、つまり我々自身がビジネスを変えていくというステージで、2025年以降は「社会を変える」ステージとして位置づけています。

去年までは、まずは組織風土を変えるために様々な取り組みを実施して外部への発信も強化しました。次の3年では、自分達のビジネスの在り方も変化させていき、さらに社会を変えるというステージを見据えていかなくてはいけません。社会を変えようとすると、自分達だけでは難しいと思います。

今回、御社と一緒に開発した製薬要素を含むデータサイエンティスト育成コンテンツのように、他にも様々なパートナーさんとの協業によって生まれる成果を、さらに多くの方々を巻き込みながら展開していくことに、これからの3年間はチャレンジしていきたいと考えています。

現在、CDAで培った「製薬×データサイエンス」のノウハウを、我々だけの中に留めておくのではなく、社外にも提供して社会還元ができないかALBERTさんと一緒に検討中です。

我々の課題のひとつに、製薬企業にデータサイエンスが必要だということがまだ世の中に十分認知されていないことがあります。データサイエンティストの方が就職先として製薬企業に興味を持ちにくいという状況を変えるためにも、ヘルスケア業界にはこんなデータがあって、解析するとこんなに面白いことがわかる、というようなコンテンツをもっと発信していきたいと考えています。

平原そうですね。実は、今回のプログラムを作るにあたっては、ALBERTのなかでも製薬分野を学んだメンバーや、医療経済などを調査したシンクタンク出身のメンバーでチームを組み、教材を作成しております。専門性があり作成難易度も高いものでした。専門性の高い教材の特徴として、他の人達に触れて頂くことがないまま、そこで培ったノウハウは社会に広がらずに終わってしまうケースが多いです。

しかし、今回は中西さんがおっしゃったように、ALBERTが素地を作り中外製薬様にレビューして頂いた共同開発のカリキュラムを「社会に還元していきたい」という点に非常に共感しています。 今後、どのような形で社会に還元していくか引き続きご相談させていただきたいと思います。

中西例えば学生さんは、「最初に事業会社に入ると、ずっとその事業関連の仕事だけになってしまうので、まずはコンサルタント企業に入っていろんな業界の様々なデータを扱った後、事業会社に入る」というキャリアプランを考えている方が結構多いと聞いています。

弊社では、研究本部や臨床開発本部など各本部にいるデータサイエンティストのほか、我々のデジタル戦略推進部にもデータサイエンティストがいます。各本部のデータサイエンティストは、当然研究なら研究、臨床なら臨床を専門に扱いますが、デジタル戦略推進部は部門横断的な組織ですので、朝は研究の解析をしながら夕方は営業のデータを触る、といった働き方も可能です。また、ずっと研究をやっていたいという方もいますので、そういう人は各部門に所属する、という感じでうまく働き方のニーズに対応できるのではと思っています。

CHUGAI DIGITALの発信を強化している目的の一つでもありますが、新卒に限らず、中外製薬がデータサイエンティスト志望の方の選択肢に入るように、今回のコンテンツも外部への展開を通じて、製薬会社が持つデータの多様さを知ってもらい、それらのデータを触ってもらうことで認知拡大のきっかけになればと考えています。

平原ALBERTには250名を超えるデータサイエンティストが現在在籍しており、この分野は職種としても、人気がございます。製薬業界でも、データサイエンスを学んでいるとどんな風に活躍できるか、そのキャリアについても伝えていきたいですね。

一方で、今は大学の理系出身の優秀な学生をいろんな企業が奪い合っていて、年々それが激化していっています。これからは、少ない人財を奪い合うのではなく、例えば、製薬業界でのデータサイエンス活用の認知が低いのであれば、業界内の人達に対してデータサイエンスのノウハウを提供する一方で、製薬業界には詳しくはないけれども、データサイエンスに詳しい人財に製薬業でのデータ活用を学ぶ機会を共創し、人財の母数が増えていくように社会で育てていく取り組みが必要です。ALBERTもぜひそこに携わり支援していきたいと考えています。

また、ALBERTでは人財育成支援だけでなくデータ分析やAI開発も行っています。互いの強みを活かし、創薬分野でのデータサイエンスの活用や業務改革につなげ、社会で広く活用されるようなAIモデルの構築プロジェクト等を一緒にチャレンジできると面白いなと思っています。

中西そうですね。今後もぜひよろしくお願いします。

平原こちらこそ、引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部長 中西 義人様 株式会社ALBERT 執行役員 データサイエンス教育部長 平原 昭次

※2022年4月掲載。本文中に掲載されている制度や事例、部署名、役職等の内容は、掲載当時のものであり、
現在はそれらの内容が実在していない、あるいは変更されている可能性があります。

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