CROSS TALK

「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」
デジタル人財を育成しヘルスケアの未来を変える

中外製薬は、成長戦略「TOP I 2030」のもと「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げ、デジタル技術によって自らのビジネスを変革し、社会を変えるヘルスケアソリューションの提供を通じヘルスケア産業のトップイノベーターを目指しています。2019年10⽉にはDXを部⾨横断で推進するデジタル戦略推進部を発⾜させました。

今回は、中外製薬様との取り組み紹介の第二弾として、人財育成の取り組みである「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」での1年目に実施した内容や成果について、参加した受講者及び事務局の皆さまと、ALBERTの講師2名で座談会を実施しました。(第一弾「「製薬×データサイエンス」で社会を変える」はこちら

※この座談会は、2022年3月に新型コロナウイルスの感染対策を講じたうえで実施しました。

2021年4月より「CHUGAI DIGITAL ACADEMY」が始動

関沢中外製薬では全社のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進する機能として、デジタル戦略推進部が2019年10月より発足しました。私の所属するデジタル戦略推進部企画グループでは主にDX戦略の策定、ブランディング、風土改革や人財育成を通じて、DXの全社への浸透を推進しています。

それらの取り組みの1つとして2021年4月よりデジタル人財を体系的に育成・強化する仕組み「CHUGAI DIGITAL ACADEMY(以下、CDA)」を立ち上げました。その1つのコンテンツであるデータサイエンスト育成プログラムの作成・提供をALBERTさんと一緒に行っています。

中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部企画グループマネジャー 関沢様
中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部企画グループマネジャー 関沢様
中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部企画グループ 熊谷様
中外製薬株式会社 デジタル戦略推進部企画グループ 熊谷様

熊谷同じくデジタル戦略推進部企画グループでCDAの事務局を担当しています。ALBERTさんにはCDAを立ち上げる前のパイロットプログラムのときから日々お世話になっております。

私は元々コーポレートやCHUGAI DIGITALの広報の仕事をしていましたが、特にこの1年間は人が短期間で成長する様を目の当たりにして大きなやりがいを感じています。本日参加している山脇とデイビスは、2021年4月に開始したCDA第1期を卒業したメンバーです。

山脇私は研究本部の創薬化学研究部に所属しており、専門は有機合成化学です。非臨床試験に用いる開発候補化合物を合成するための初期プロセス製法の検討を行っています。

中外製薬としてもデジタルの活用を1つの柱としてR&Dアウトプットを2倍に拡大するという目標を掲げており、目標達成に大きく貢献できると思いCDAを受講しました。

中外製薬株式会社 研究本部創薬科学研究部・鎌倉研究所 山脇様
中外製薬株式会社 研究本部創薬科学研究部・鎌倉研究所 山脇様
中外製薬株式会社 信頼性保証企画部翻訳マネジメントグループ デイビス様
中外製薬株式会社 信頼性保証企画部翻訳マネジメントグループ デイビス様

デイビス私は信頼性保証企画部翻訳マネジメントグループに所属しています。主に翻訳実務とその関連業務を担当しています。以前はゼロから翻訳していましたが、最近は機械翻訳が進歩しているので、そういった技術を活用しています。

自部署の翻訳関連業務のSOP(標準業務手順書)の整備や用語集の整備、機械翻訳の普及活動も行っています。製薬本部、研究本部、臨床開発本部を対象にした医薬英文ライティングセミナーの企画・運営も担当しています。

データ分析とは無縁に近かったのですが、元々興味を持っていたことから今回CDAを受講させていただきました。

デジタル人財を育成する仕組みづくり

関沢全社のDXを推進するにあたって私たちが大切にしているのは、経営層の強いコミットメントと全社員が共感して同じ方向を向くためのビジョンと戦略です。それを「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」として社内外に発信することで「中外製薬がDXに注力している」という社内の意識と社外からの認知が定着しつつあります。

このビジョン達成に向けて最も重要な要素の1つが人財です。弊社CEOの奥田は、イノベーションを起こすのは人であり、社員一人ひとりが価値創造の原動力であるという考えから「やっぱり、ひと」と常々申していますが、DX推進においても例外ではありません。デジタル戦略推進部では、CDAの取り組みの中で全社に必要となるデジタル人財像を定義し、その育成を部門横断で行う仕組みを立ち上げています。

熊谷CDAの「データサイエンティスト育成コース」と「デジタルプロジェクトリーダー育成コース」は、それぞれOff-JTとOJTを合わせて約9ヶ月間のプログラムです。2021年4月に第1期が始まり、3カ月毎に新しい期を開講しています。最初の2ヶ月間は職種を交えた共通のOff-JT研修を実施し、その後の専門Off-JTから職種ごとに分かれます。

ALBERTさんに支援いただいているデータサイエンティスト育成コースの専門Off-JTでは、前半2ヶ月間でPythonによるプログラミングや統計を、後半1ヶ月で製薬特有の要素を習得します。最後に所属部門に戻り、実務に近い環境でOJTを4ヶ月間実施し、その成果を発表して卒業となります。

コロナ禍の影響で全ての研修がリモートでの実施となり、対面では一度も会ったことのない受講者も少なくありませんが、質疑も活発に行われており、勤務地の制限を受けずに参加できることなどメリットもありました。

製薬要素を含む体系的なデータサイエンススキルを習得、
多様な受講者に合わせた独自プログラムを開発

関沢DX人財、特にデータサイエンティストを育成するコースを体系的に作った経験が無かったため、まずは一緒にプログラム開発をしてくれるパートナー探しから始めました。デジタル人財の育成コンテンツを展開しているいくつかの会社様とお話をさせていただき、それぞれの会社のケイパビリティについてうかがいました。

その際、我々がポイントの1つにしていたのは、一般的なデータサイエンティスト育成だけではなく、製薬に特化した分野のコンテンツも一緒に作っていける会社かどうか、という点でした。ALBERTさんは製薬分野のバックグラウンドを持った社員が複数在籍しておられ、弊社と話し合いながら一緒にコンテンツを作れるだけでなく、一般的なデータサイエンティスト育成コンテンツの提供実績も豊富なことからALBERTさんを選定させていただきました。

また、製薬業界における分析プロジェクトの受託経験も持ち合わせておられ、机上のデータサイエンスではない、実際の生々しい部分も含めていろいろご経験があるところも選定のポイントになりました。

西村ありがとうございます。今回の製薬要素を含むプログラム開発においては、これは必要だと私が考えるものと、初学者の方にとって重要だと考えられる部分を混ぜ込んでいく、そのバランスを取る部分が一番難しいと感じました。

また、製薬に関するバックグラウンドがあるとはいえ、私は製薬企業で働いていたわけではないので、学んできた統計の知識や疫学の知識等が実際どのように使われているのか、中外製薬様にヒアリングさせていただいたり事前に調べたりして、資料にするうえでどういった内容が有益なのかを詰めていく部分もかなり大変でした。

それでも、一般的な教科書に簡潔にまとめられている内容や、ネットで簡単に調べられる内容のみに終始しない、深みのある内容も入れて提供したいという想いを持って作成しました。

株式会社ALBERT データコンサルティング部 西村
株式会社ALBERT データコンサルティング部 西村
株式会社ALBERT データサイエンス教育部 井田
株式会社ALBERT データサイエンス教育部 井田

井田私は製薬要素を含まない部分の資料作成を担当しました。新たに資料を作成する講義もありましたが、多くの講義は弊社が保有している資料で対応することができました。また、中外製薬様に資料の内容やプログラムのレベル感の調整などを含め、細かいところまでチェックやレビューをしていただいたことで、資料のクオリティを高めることができ感謝しています。

熊谷実務経験豊富なデータサイエンティストが細かくレビューさせてもらいましたので、実践的な内容になっていると思います。ただし、実際に講義で使用してみることで初めて分かる過不足もあります。受講者や講師からのフィードバックを元に、期を追うごとに少しずつ内容アップデートできているのも良い取り組みだと思います。

受講者から全社へ、デジタル活用意識の浸透に向けた取り組み

山脇特に製薬要素を含む内容については、これだけ体系だった教材はなかなか無いと思います。非常に貴重な学習の機会をいただけたと思います。データの処理自体は以前から行っていましたが、改めて勉強するとやはり知らないことも多く、製薬要素を含む教材も製薬要素を含まない教材も、本を1冊読んだ程度では全然追いつかないような、非常に体系立った学びが得られたと感じています。

先日、E資格(一般社団法人 日本ディープラーニング協会が提供するエンジニア資格)を受験して合格しました。改めてALBERTさんの資料を見返すと、E資格の内容が多く盛り込まれており、E資格の取得を目指すにあたっての基礎としてもいいトレーニングになりました。 製薬要素を含む内容で学んだデータ活用は、非臨床での仕事が主であるため実際に取り扱うデータとは異なるものの参考になる点は多く非常に勉強になりました。

デイビス私は最初データ活用とはほぼ無縁だったので、今回受講したことでその土台ができました。最初は非常に難しく感じましたが、幅広く勉強することができました。現在は、オンライン学習プラットフォームでも自己学習をしており、そこで今回学んだ知識を深めています。一般的にPythonの学習は多くの方が挫折してしまうという話を聞いたことがあったのですが、今回の受講で基礎の土台ができたおかげで今も自己学習を頑張ることができています。

実務での活用について、現在は翻訳業務を通じて様々な社内業務に関するデータを扱っています。例えば、社内システムの全社的な利用傾向の把握や促進施策の検討、またダイバーシティ推進の活動にも関わっておりそのアンケートデータや、大量の議事録の分析にも活用しています。 CDAで学んだ以外の知識も、土台があるおかげで、自分の業務に関係しそうなスキルについてもっと勉強したいときに非常にやりやすくなりました。今後もCDAで学んだことを継続しながら、さらに色々と応用してきたいと思います。

正直なところ、最初は翻訳業務でデータ分析などは関係ない、プログラミングなどをやってみようという発想すらありませんでした。受講してからも、内容が抽象的であったり理解して身につくまでには時間がかかりました。一生懸命理解しようとしているうちに進んでしまうこともあり、復習は必須でした。ただ、何事もそうですが、受講したからといって、すぐできるようになるとは限らず、楽器や語学等と同様、どのくらい自身で復習したり練習したりできるかがとても重要だと感じました。

山脇まだデジタル活用のイメージについて社内に広く浸透していなかったり、CDAで何をやっているのか認知されていない部分があると思います。私の部門では、デジタル活用について周囲から聞かれることはまだなく、私の方から「このように活用できそう」というアプローチをすることが多いです。

例えば、私が携わっていないプロジェクトのデータを見て「これなら何か新しい知見が得られそうだ」ということがあると私の方からコンタクトを取っています。今は、部内でもPythonを勉強しようという流れがかなり大きくなってきており、まさにデジタル活用が広まろうとしているところだと思います。これから、多くの人が自分でデータ処理し、活用きるようになればと思います。

関沢CDAのプログラムは9ヶ月にも及ぶもので、その期間は就業時間の約20%の工数が必要となるため、業務調整などの負担も大きいのですが、受講者の皆さんはすごく前向きに取り組んでいて、自分のスキルを向上させて、それをどうやって業務に生かすのかを真剣に考えてくれています。

その方々が中心となって、それぞれの部門の中で火種となり、その火種がどんどん大きくなっていると感じます。CDAの推進においては受講者の方のこういった姿勢に加えて、受講者の所属する部署とその上司の理解・協力があることも大きな要素になっています。

熊谷今回参加している山脇とデイビスの担当業務が異なるように、基礎研究から臨床開発、製造、マーケティング等々、長いバリューチェーンのなかで幅広い職種の社員が働いています。その中で、デジタルを活用するためのスキルやマインド等を身につけてもらうにあたり、メンバーのベースラインが異なることは悩ましいポイントのひとつでした。

受講者募集にあたって、ある程度は人財像を示して各部門から人を選出してもらいますが、やはりばらつきは出てきます。例えば、日々統計解析を行っている生物統計家もいれば、ほとんど統計に触れたことが無いメンバーもいますし、数学に関する理解度やプログラミングの経験もまちまちです。この点についてはALBERTさんと課題感を共有し、補助教材を使ってベースラインを一定レベルまで底上げする等対応しました。

バックグラウンドやベースラインが異なることは必ずしも悪いことばかりではなく、違いがむしろポジティブに働くことも多いです。研修内容を十分に理解できた人は、講師をサポートする形で補足情報を提供したり、他のメンバーにチャットなどで教え合ったりしていました。

また、初学者ならではの気づきが核心に迫ることもよくあります。心理的安全性のもと、「自分はここが分からない」とか「こういう考え方もあるんじゃないか?」というようなことを遠慮なく出しあえる場作りがとても大事だということにも気づかされました。

井田おっしゃる通りですね。今回私はPythonと製薬要素なしの講義の一部を担当しましたが、山脇様やデイビス様も、よく質問していただいたことが印象に残っています。

山脇様は、自身が理解されるのが早かっただけではなく、他の受講者に対して「こういうこともできます」「このサイトが参考になります」などのフォローもしていただきました。また、Pythonを初めて使う方は慣れるまで時間がかかりますが、デイビス様をはじめ受講者の方にどんどん質問していただいたため、繰り返し説明したり、別の観点から説明する機会を設けることができました。

私個人の意見ですが、場作りという点では、運営や事務局の方がどれだけ深くコミットしてくださるかという点が大事だと考えています。中外製薬様の場合、積極的に質問するように熊谷様から受講者に伝えていただいているため、質問しやすい環境になっていると思います。

さらに驚いたのは、第1期の研修期間中に、熊谷様も毎日コードを書かれていたことです。研修がうまくいくように、ご自身も毎日10分でもコーディングをしているという話を伺い、本当に事務局の皆さんが前向きに取り組んでいらっしゃると感じ、非常に感動しました。

西村製薬要素ありの分野は、私よりも受講者の皆様の方が分野によっては詳しいこともありました。基礎的な部分もそうですし、統計や臨床試験に実際に携わっている方がもちろん私よりその分野は詳しくて、そういう方から「こういう資料もある」「こういう事例もある」「中外製薬の過去のパターンでこんな統計的課題があって」、というように実際に使われている場面を紹介していただく等のフォローが大変ありがたかったです。

私自身も、勉強になるとともに、講義の中で話している内容が、製薬企業様の中で実際に使われている統計学であることを改めて実感することができました。

基本的な部分は私達で展開できますが、受講者の方同士が必要な部分を共有していただけたことで、より学びが深くなり、受講した皆様にとってもためになったのではと思います。後は、私がうまく説明しきれていなかった部分を指摘や質問していただくことで、もう一度その部分をフォローアップする機会にできたので、たくさん質問をしてもらえたのも、すごくありがたかったです。

今後のCDAに関する展開について

井田私は、今回講師と運営として携わらせていただきました。期が進むにつれて、受講者の満足度や理解度について少しずつ知見がたまりつつあるので、もっと分かりやすくしたり、内容を少し変えたりなどしながら、資料のさらなる改善に取り組みたいと思っています。

日進月歩で新しい技術も出てきているので、それらもうまく取り入れながら、機械学習や統計モデリングなど最新の情報を講義の中でも触れて、中外製薬様の人財育成に貢献したいと思っています。

関沢ありがとうございます。CDAはデジタル人財を体系的に育成する仕組みとして立ち上げましたが、その目的は2つあります。
1つは様々なコンテンツの開発・提供により社内のデジタル人財を育成すること、もう1つは社内で育った中外製薬のデジタル人財が、外部の研修や各種コミュニティ等、社外でも活躍できるよう支援すると共に、社内で蓄積した育成コンテンツや育成ノウハウ・経験を社会にも還元し、デジタル人財の社会課題解決に貢献していくことです。

今後はデジタル人財の裾野をより広げるために、多くの社員がデータサイエンティストやデジタルプロジェクトリーダー育成のコンテンツに触れられる機会を増やしたいと考えています。
外部向けの取り組みについては、すでに世の中にデータサイエンスのコンテンツはたくさんありますが、今回共同開発したような製薬要素を含む体系的な教材はまだ世の中にほとんどないので、そういったものも含めて外部に展開することを検討していきたいと思います。

西村今回の製薬要素ありの講義の中では、時間の制約や受講者が初学者の方が多いということもあって、かなり内容を削った部分もあるので、もしさらに高度な部分を学びたいという方がいらっしゃれば、製薬要素あり・製薬要素なしを含めて、中級者・上級者向けの講座や演習を提供させていただくことで、データサイエンスが使える範囲がさらに広がって面白くなるのでは、と思います。今回のコンテンツでは触れていない分野やデータサイエンスの手法を紹介したりなど、まだまだ製薬領域におけるデータサイエンスの活用には広がりがあると感じています。

※2022年5月掲載。本文中に掲載されている制度や事例、部署名、役職等の内容は、掲載当時のものであり、
現在はそれらの内容が実在していない、あるいは変更されている可能性があります。

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