CRMにおける「リフト」とは、簡単にいえば「施策の効率性」といえます。リフト(Lift)は持ち上げるという意味ですが、施策を打つことによって、打たない時に比べてどの程度結果が持ち上がったのかと考えるとわかりやすいと思います。ランダムな顧客にプロモーションやレコメンドを行なった時の結果に対して、「セグメントを設定して施策を行なう」「ある条件の時はこの施策を行なう」などのルールを作った時に、結果がどの程度改善するかという概念です。
これはある商品Aを購入した顧客に商品Bを推薦するという施策(ルール設定)をすることによって、顧客全体に商品Bを推薦した場合より、どの程度購入確率が改善するかという指標です。商品Aを購入した顧客に商品Bを推薦するにあたって、そもそも商品Aを買った顧客は他の顧客に比べて商品Bを買う確率が高くなければ推薦する意味がないわけです。
効率的なCRMを実現する上で、買ってくれそうな顧客かどうかの順位付けをすることは非常に重要です。たとえば、ランダムに選んだ10万人にダイレクトメール(DM)を送ると、1,000人が買ってくれる商品があるとします。購入確率は1%しかない。DM が1通当たり100円(ここでは初期費用はゼロと仮定しています)だったとすると1,000万円のコストがかかります。1,000人しか買ってくれないのですから、1個当たり1万円の粗利だとして、トントンで利益は出ません。
一方、この時に得られる利益はどうでしょうか。10万人にDMを送ったのでは利益がトントンであることがわかっています。また、実際には初期費用がかかるので、10人や20人に送ったのでは赤字になります。となると、どこかでピークがあるはずです。これをグラフにしたのが図9で、利益を最大化するには、1万9,200通のDMを送ればよいということがわかります。この時の販売数量は577個で1,000個は売れないけれど、578個以上売ろうとすると、利益はどんどん減っていくのです。このように、リフト率が最大になるようなモデルを見つけそのROIを基に実際のビジネスに活用します。
プリントメディアのDMはこのようなコストがかかりますが、電子メールであれば送付素が増えてもコストアップは限りなくゼロに近いので、とにかく全員に送るのがよいという考えをする企業もあるのですが、これはメールのスパム化を起こし顧客が離反する可能性が高いので、電子メールによるプロモーションでも見込み客に絞って配信することが肝要です。